3.古墳時代(4世紀)の大規模噴火Large-scale Eruption in the 4th Century 高橋正樹・安井真也・竹本弘幸(日本大学文理学部地球システム科学教室) 紀元後最初の大規模噴火は4世紀の古墳時代のものである.このときの噴火の推移や正確な噴出量についてはまだ不明の点が多い.しかし,この時の噴出物はかなりの程度残されており,それから推定される噴火の推移は以下のようなものであったらしい.まずプリニー式噴火の噴煙柱が空高く上がり,上空の風に流されて東南東方向に流れ大量の軽石を降下させた.図3-1はこのときの降下軽石層(As-C)の等層厚線を示したものである. 図3-3は黒豆河原源流部にみられる4世紀噴火噴出物の写真である.ここでは,最下位の溶岩,その直上の赤色酸化した火砕岩,それを覆う強く溶結した火砕流堆積物,さらに厚さの薄い降下軽石層をみることができる.これら一連の堆積物は,12世紀のBおよびB'降下軽石層に覆われる. 火山体近くでは,これに次いで火砕流が噴出し,さらに溶岩流が流下するとともに,再び火砕流が噴出し,最後に軽石が降下している.それぞれの堆積物の間には長い時間間隙を示す証拠はみられず,これらは比較的短期間の一連の噴火活動の中で相次いで噴出したものと考えられる. 1輪廻の噴火について1輪廻の噴火とは,噴火の開始とともに上空に向かって勢いよく噴出した噴煙からまず火砕物が降下し,次いで噴煙の勢いが弱まるとともに火砕流の流出へと移化し,最後に溶岩が火口から溢れ出すというものである.これは,最初勢いよく発泡したマグマが,次第に発泡の程度が衰えて,最後はガスの抜け殻である溶岩となって流出するか,あるいは,噴火直前のマグマ溜り内で,天井部に揮発性成分(ガス成分)が濃集しており,噴火の推移にしたがってマグマ溜り下位のガス成分に乏しいマグマが噴出してくるという考えに基づいている. これまで,浅間前掛火山の大規模噴火も,こうした1輪廻の噴火プロセスをたどった典型的な例であるとみなされてきた.しかし,最近の研究によって,浅間前掛火山の大規模噴火は,ほぼ同時的に進行した一連の噴火イベントからなることが明らかになってきた.噴煙が繰り返し火口から溢れ出して火砕流となって流下するとともに,その一部は噴煙柱として高く上昇して火砕物を降下させる.さらに噴煙から大量に火口付近に降下した火砕物が強く溶結し再流動することで火砕成溶岩として流下する.また,同時に火口周辺に強く溶結した火砕丘を形成する. 4世紀大規模噴火噴出物も,必ずしも典型的な1輪廻噴火の噴出順序を示しておらず,一連の噴火プロセスの中で,かなり複雑な過程を経て形成されたもののようにみえる.
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