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1982年4月浅間火山噴火の降灰について

吉川克己・峰岸佳典・宮地直道(日大院)・遠藤邦彦(日大)・倉川博(日大聴)

※所属は発表当時のものです.

1982年4月26日の浅間噴火による火山灰の分布,粒度特性,比重などを調査し,その運搬,堆積過程を検討した.噴火は午前2時25分の中噴火に始まり,5時48分の再活発化をはさみ6時40分まで微噴火を継続した(吉留,1982*).火山灰は南東へ流れ,東京でも6時頃から降灰が観察された.26,27日に各降灰地域で降灰限界の確認,降灰量の測定,試料採取を行い,後に降灰域の内外で聞き取り調査を行った.降灰分布を図1に示す.

図1 1982年4月浅間火山噴火降灰分布

図1 1982年4月浅間火山噴火降灰分布

層厚は測定不可能なため,単位面積当り降下量(重量)を測定した.図2のように,軽井沢−下仁田−皆野−入間−東京を結ぶ明瞭な軸と,火口から佐久盆地へ延びる軸が認められる.図3ではこれら軸上の点は異なる線上にのる.この傾向は図4,5でも明瞭である.

図2 等堆積量線図

図2 等堆積量線図(g/100cm2)

図3 火口からの距離による堆積量(g/m2)の変化

図3 火口からの距離による堆積量(g/m2)の変化

図4 火口からの距離によるMdφの変化

図4 火口からの距離によるMφの変化

図6では2つの軸上で淘汰が良く,境界部で悪くなる様子がわかる.これらの傾向を個々の粒径頻度分布でみると,南東への主軸上では砂粒部が卓越し,軽井沢→秩父へと細粒化するが,秩父以東では変化が小さい(図7〜10).他方,佐久盆地側では粗粒部を殆んど欠き,4φを中心とする部分が卓越する(図11,12).鏡下では,この火山灰は褐色に汚れた斜長石と角のとれた破片状の輝石を主とし,火山ガラスを殆んど欠く.比重は2.6〜2.7と一般の降下軽石に比べ高い.

Mdφ等値線図 σφ等値線図

図5 Mdφ等値線図

図6 σφ等値線図

σφは積率公式による

図7-12 各地の粒径頻度分布

図7-12 粒径頻度分布

主軸の方向は上空4300mの風(WNW,7m/s.AM3:00気象庁)に規定されると思われる.飯能以東では,8時頃から吹き出した南風により火山灰の分布が北へ張り出している.東京湾付近における分布の南への折れ曲りについては,中層風の影響を考慮すべきである.また佐久盆地へ向う表層風は6〜8時頃より観測されており(気象庁),同盆地浅科村における降灰時刻と対応している.今回の火山灰の総噴出量はおよそ5×10-5km3と見積られる.

  *吉留道哉(1982)昭和57年4月26日浅間山の噴火,気象,'82-6,No.302,p13-14.

1982 年に開催された日本第四紀学会の講演予稿集に掲載された吉川・他の講演要旨です.引用する場合は以下のようにお願いします;

  吉川克己・峰岸佳典・宮地直道・遠藤邦彦・倉川博(1982)1982年4月浅間火山噴火の降灰について.日本第四紀学会講演予稿集,No.12,98-99.
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