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火山活動により過去に起こった災害

■世界の火山災害と死者数

 

過去数百年間に世界で30万人以上の人々が火山噴火によって命を落としています。
災害現象死者数
火山活動にともなう災害現象の死者数(R.J.Blong)


■日本の火山災害

 

日本の火山災害史上最も多くの人命が失われたのは、1792年の雲仙岳の噴火活動です。火山活動に伴って眉山が大崩壊を起こし、その崩壊物が一気に海に流れ込んで発生した津波が対岸の熊本県側を襲い、約1万5千人が亡くなる大惨事となりました。火山活動に伴う津波災害は火山から離れた広い地域に被害が及ぶため大災害となります。

火山活動による山体の崩壊も大災害を引き起こします。特に有名なのは1888年の磐梯山で461名の死者を出しました。津波に次いで大きな災害を与える現象は火砕流です。1783年の浅間山噴火の時に発生した鎌原火砕流は、旧鎌原村落を埋め尽くし下流の泥流や洪水現象まで含めると約1200名の死者を出しました。火山泥流も多くの犠牲者を出しています。1926年に北海道十勝岳で発生した大泥流災害では、2ヶ村が埋没し144名の死者が出ました。最近では平成5年6月の雲仙普賢岳噴火でも土石流により多数の人家が破壊・埋没しました。
溶岩流による災害は、鹿児島県の桜島が最も有名で、最近では伊豆七島の三宅島(1983年)や伊豆大島(1986年)が記憶にあたらしいところです。

被災した小学校跡
被災した小学校跡の写真
(写真;大野博之(長崎大学工学部)提供)

三宅島
1983年三宅島(写真;朝日航洋株式会社提供)


予想が難しい山体崩壊と岩屑なだれ

■山体崩壊と岩屑なだれ

 
火山の山体が大崩壊する現象は、マグマの上昇に伴う山体の膨張などによる水蒸気爆発や火山性地震が起こることで発生します。大規模な山体崩壊は岩屑なだれ(崩壊した岩塊が岩なだれのように流れ下るもの)となって山麓へ流下し、様々な災害を引き起こします。
山体崩壊は噴火などの火山活動だけでなく、地震や豪雨により発生する場合もあります。
日本では火山災害史上最大の死者を出した1792年の雲仙岳火山活動に伴う眉山の山体崩壊、1888年に発生した福島県磐梯山の災害などが有名です。

磐梯山
1888年に大崩壊を起こした磐梯山
稜線には崩壊の後が現在も鮮明に残っている。手前の岩屑なだれ堆積物の上には植生が復旧し、堆積物の間にできた沼(五色沼)とともに美しい景観を創造している。

■セントへレンズ山の大爆発

 
大規模な山体崩壊が詳しく観測されたのは、1980年にアメリカのセントへレンズ山で起きたものです。セントへレンズ山は標高2975mで富士山によく似た火山ですが、山体崩壊が発生する約2ヶ月前から山頂部北側へのせり出しが進んでおり、山頂部を東西に走る長さ5000mの割れ目も観察されていました。5月18日にマグニチュード5.0の地震が発生すると同時に、せり出した部分が滑り出しました。
この山体崩壊で崩れた岩塊のほか、山頂部の雪や氷河の塊などが一体となった岩屑なだれは、ノースタートル川に沿って約18キロ下流まで流下しました。

セントヘレンズ山
1980年セントヘレンズ山の大爆発後の景観
(写真;荒牧重雄(東京大学名誉教授)提供)