火山灰の正体
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火山というと、誰しも噴煙を上げている山の姿を思い浮かべます。噴煙は火口から柱状に立ち上るのが一般的ですが、火山体を流れ下る火砕流も大量の噴煙を発生させます。この噴煙の正体は粉々になったマグマと火山ガスが混ざったものです。熱せられたガスは、ちょうど熱気球のように、こなごなになったマグマを大量に上空へ持ち上げます。噴煙に含まれるマグマは上空でひやされて固まり、再び地上へ舞い戻ります。これが火山灰の仲間(テフラ)です。
テフラのうち大粒のものは、火山礫と呼ばれます。軽石などが火山礫の仲間です。普通私達が火山灰と呼ぶものは、砂粒やそれより細かい粒のテフラです。
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自動車に積もった火砕流にともなう降下火山灰
(写真;陶野郁雄 提供/1991年9月16日島原市内)
大きな火砕流発生の翌日は一面灰だらけで直径数mmの火山豆石が積もる。
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火砕流にともなう火山灰上空を覆う
(写真;陶野郁雄 提供/1992年9月25日深江町)
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火山灰の被害
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火山灰は上空の風によって遠くまで運ばれます。日本付近では上空の偏西風の影響で、火山灰は、噴煙の発生地点よりも東方へ南北に拡散しながら広がります。熱帯地域では東風が吹くため、火山灰は火山の西側に広がります。
大量に火山灰や軽石が降ると家屋の火災を引き起こしたり、重さで家屋を破壊したりします。少量の降灰でも果実や作物の生育を阻んだり、自動車の走行を困難にしたり、洗濯物を汚したりする被害が生じます。
しかし、適量の火山灰が降り積もる場合には、火山灰層の間に落葉や草の根や茎などの有機物を挟み込むことになり、長期的には土壌を肥沃にする役割も果たしています。
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火山灰は体に毒か?
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火山灰を分析すると、特に有害な成分などは多く含まれていませんが、火山灰の粒子に硫黄酸化物など刺激性のガスが付着している可能性はあります。
一番気になるのは、慢性気管支炎やじん肺などの肺の病気を起こさないかということでしょう。
人が吸い込み肺の奥までたどりついて肺に障害を起こす火山灰は
およそ10ミクロン未満の非常に細かい粒子の一部です。従って大部分の火山灰は気道で粘液に包まれ痰として口からはき出されます。
また細かいサイズの粒子(浮遊粉塵)は、火山から少し離れた地域に多くみられ、火山のすぐ麓では大きな粒子が大量に落ちてきますが、この大部分は肺の奥には入りません。
鹿児島県の桜島周辺で、火山から離れた地域(大隈半島の高暴露地区) 火山のすぐ麓(桜島地区)、そして風向きなどでほとんど火山の影響の
ない地域(薩摩半島の対照地区)の3か所で慢性の呼吸器疾患への影
響を調査した結果が右図です。呼吸器疾患が前述の順に多く見られますが、 実はこの呼吸器疾患の有症率は、一番高い地域でも都会に比べてはる
に低いのです。
このように、火山灰そのものにはそれほど強い毒性はなく、遠方では毒性が薄くなってから地上に降りてくるので、その周辺でもほとんど健康に影響がないと考えてよいようです。
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火山灰がもうもと舞い上がる島原市街地
(写真;陶野郁雄
提供/1991年9月16日)
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桜島周辺地域における呼吸器疾患の有症率
浮遊粉塵濃度
(矢野英二(帝京大学医学部)1987年) |
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