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左:山中湖から 右:河口湖から
当日朝,深い気圧の谷が通過中でした。ひとつ三陸沖・関東沖に抜けた低気圧・前線に向けて北西風が吹き,雲の少ない状態になっていましたが,まもなく中国東北部に中心をもつ低気圧から伸びる寒冷前線が関東地方まで南下してきました。その南縁を吹く南西風に転じ,それととともに前線に伴う積雲・乱層雲が急増します。
綺麗な笠雲を構成するためには,
1)十分な水蒸気,
2)山頂付近の安定層,
3)安定した風向
が必要条件ですが,この場合,1)は十分ながら2)3)を満たしていなかったようです。前線面の安定層はあるのですが,風向が一定せず,また風速が強すぎて,均整のとれた笠雲にはなれず,大規模な笠雲が形成されかかっては崩れるという繰り返しが,波動状のダイナミックな雲の消長から見られます。上空ほど南西風が強いという鉛直シアも,風向・風速の乱れを助長していたのでしょう。
「かなとこ状」の雲は,笠雲になりかけた雲が,風下側の山中湖側で剥離層(一般風とは逆向きの流れとなる層)内の山腹から湧き上がる気流,または寒冷前線面上を急上昇する気流によって煽られたためと考えられます。河口湖測候所による 笠雲分類に該当するものはなく,新種の「かなとこ笠雲」といえるかもしれません。 |