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3月3,4日大規模黄砂の到来−いよいよ黄砂のシーズン− 〜今冬の天候異変・異常気象海象を探る4遠藤邦彦・山川修治 今年の黄砂は,2月12日に韓国17地点で観測されたのが始まりでした(気象庁黄砂情報による.以下同じ).この時は日本では目だったものが捉えられませんでした.今回の黄砂は,2月29日頃から大陸で兆候が現れ始め,3月1日にはモンゴルから中国北部に掛けて19地点で黄砂が記録されました.山西省や山東省では視程2−5kmにもなりました.3月2日になると,韓国21地点で観測され,その内4地点では視程2−5kmでした.対馬でも確認されました.さらに3月3日になると,韓国で30地点,日本では南西諸島の南端から宮城県に至る55地点で黄砂が観測されました.韓国では視程2km未満が3地点で,九州では視程2−5kmが3地点で観測されました.3月4日も九州,南西諸島から関東まで27地点で認められています. 西南学院大学I教授の連絡では,3日の日中降り続いた雨に黄砂が含まれて,泥雨状態となり,地面にもうっすらと堆積しているのが分かるほどであったそうです.雨滴自体が茶色く見えたということです. 長崎県島原市のNさんの連絡では,10時ごろから降りはじめた雨に黄砂が混じり,車のフロントガラスが汚れて運転しづらいなど,丁度雲仙普賢岳噴火のときの雨天時の降灰を思い出したということです.噴火の時には灰がフロントガラスにビッシリ張り付いて前方が全く見えなくなるほどになった事もありましたが,そこまでではなかったようです. 写真1はかすんで見える3月4日早朝の富士山です.この黄砂は東京でも車を泥だらけにしました.写真2,3はその様子ですが,フロントガラスのワイパーを1回動かすと白っぽい細かな粒子が帯状に盛り上がるようすが見られました(写真3).この部分を粒子をとって顕微鏡で見たのが写真4です.2月23−24日の砂塵嵐の粒子と比較すると細かいものがいかに多いかがわかると思います. 以下に,2008年3月3〜4日の大規模黄砂について,気象サイドの特徴をまとめます. (1)発生プロセスとしては,2月28日にシベリアの北極海沿岸にあった低気圧から切り離された寒冷渦(上空に寒気を伴う低気圧)が, 29日〜3月2日にバイカル湖の南から中国東北部,黄海,朝鮮半島を経て日本海へ南東進し,その西側のモンゴルの高気圧との間で非常に強い北西風が吹き,黄砂の砂塵を巻き上げた。 (2)運搬プロセスとしては,寒冷渦の西側から南側へ向かう反時計回りの循環に乗り,黄砂が移動した。この寒冷渦は背が高く,対流圏中層にも黄砂を舞い上げ拡大させた。ところどころで降水を伴い,黄砂を洗い流している。降雪のあった地域では黄砂を含む黄色い雪が観察される可能性も高い。 (3)今後の見通しとしては,シベリア北極海沿岸に現れている発達した低気圧は,今冬の大きな特徴であり,さらに(1)と同様の寒冷渦がいくつか形成され,その南東進に伴い,大規模黄砂が続発する恐れがある。寒冷渦の経路次第で黄砂の影響範囲も変わってくる見込み。 以上のような状況なので,これから2か月ほど,呼吸器疾患のある方などは警戒を要します. このように,いよいよ黄砂の本格的シーズンに突入しました.皆さんと共にその推移や特徴を注視していきたいと思います. 更新日:080311 ↑このページの最初へ
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