災害速報
秋田焼山の水蒸気爆発 (1997年8月18日22:00作成
9月20日10:00更新 ver 8.0)
- 林による現地写真(8/19)
- リンク集を作りました(8/20)
- 追加の現地写真(8/21)
- コメント(8/22)
- ▲三宅先生による参考文献紹介のページ(8/22)
- ▲林による地形変化解析のページ(8/23)
- ●現地調査に行って来ました(9/18)NEW
姉妹ページ?
- 澄川地すべり・土石流のページ(8/18)
- 北海道第2白糸トンネルの岩盤崩壊のページ(8/30)
- ●安達太良山火山ガス事故のページ(9/15)NEW
気象庁発表情報など
(西出@仙台管区気象台さんからfunkaネットへの情報を転載)
●1997/9/19(臨時情報第3号の内容)
9月18日23時10分頃,約6分間火山性微動が観測されました。遠望カメラでは異常は認められませんが,今後の火山活動に注意して下さい。
(観測情報第15号の内容)
9月18日23時10分頃の火山性微動発生以降、火山性地震が増加していす。時間別の火山性地震回数は次のとおりです。
- 9月18日23時台 5回
- 9月19日00時台 13回
- 9月19日01時台 19回
引き続き今後の火山活動に注意して下さい。
●1997/9/16 16:00(観測情報第14号の内容)
8月16日の噴火(水蒸気爆発)以降の火山活動状況をお知らせします。(平成9年8月19日14時00分発表,臨時火山情報第2号関連)本日(16日)15時までに観測した火山性地震は1262回,火山性微動は4回です。
9月9日から16日までの火山性地震及び火山性微動回数
- 9月 9日 火山性地震 7回,火山性微動0回
- 10日 火山性地震 0回,火山性微動0回
- 11日 火山性地震 16回,火山性微動0回
- 12日 火山性地震 19回,火山性微動0回
- 13日 火山性地震 35回,火山性微動0回
- 14日 火山性地震 12回,火山性微動0回
- 15日 火山性地震 5回,火山性微動0回
- 16日 火山性地震 5回,火山性微動0回
8月16日の噴火以降,19日の448回を最高に地震の回数は減を繰り返しながら減少しています。また,微動は8月19日以降発生していません。噴火後火口及びその周辺では火山活動に特に変化が認められていません。なお,火口周辺は立入り禁止となっています。次の火山観測情報は24日(水曜日)16時頃に発表します。火山活動に変化があれば,随時火山情報でお知らせします。引き続き今後の火山活動に注意して下さい。
●1997/9/9 16:00(観測情報第13号の内容)
本日(9日)15時までに観測された火山性地震は1167回,火山性微動は4回です。
9月2日から9日までの火山性地震及び火山性微動回数
- 9月2日 火山性地震 3回,火山性微動0回
- 3日 火山性地震 5回,火山性微動0回
- 4日 火山性地震 27回,火山性微動0回
- 5日 火山性地震 30回,火山性微動0回
- 6日 火山性地震 5回,火山性微動0回
- 7日 火山性地震 10回,火山性微動0回
- 8日 火山性地震 6回,火山性微動0回
- 9日 火山性地震 4回,火山性微動0回
8月16日の噴火以降,19日の448回を最高に地震の回数は次第に減少しています。また,微動は19日以降発生していません。噴火後火口及びその周辺では火山活動に特に変化が認められていません。なお,火口周辺は立入り禁止となっています。次の火山観測情報は16日(火曜日)16時頃に発表します。火山活動に変化があれば,随時火山情報でお知らせします。引き続き今後の火山活動に注意して下さい。
●1997/9/2 16:00(観測情報第12号の内容)
本日(2日)15時までに観測された火山性地震は1079回,火山性微動は4回です。
8月26日から9月2日までの火山性地震及び火山性微動回数
- 8月26日 火山性地震 20回,火山性微動0回
- 27日 火山性地震 13回,火山性微動0回
- 28日 火山性地震 18回,火山性微動0回
- 29日 火山性地震 15回,火山性微動0回
- 30日 火山性地震 13回,火山性微動0回
- 31日 火山性地震 14回,火山性微動0回
- 9月 1日 火山性地震 6回,火山性微動0回
- 2日 火山性地震 2回,火山性微動0回
8月16日の噴火以降,19日の448回を最高に地震の回数は次第に減少し,ほぼ 噴火前の状況となっています。また,微動は19日以降発生していません。噴火後火口及びその周辺では火山活動に特に変化が認められていませんが,火口周辺 は立入り禁止となっています。次の火山観測情報は9日(火曜日)16時頃に発表します。火山活動に変化があれば,随時火山情報でお知らせします。引き続き今後の火山活動 に注意して下さい。
●1997/8/26 16:00(観測情報第11号の内容)
本日(26日)15時までに観測された火山性地震は991回,火山性微動は4回です。
- 16日 火山性地震 62回,火山性微動2回
- 17日 火山性地震 81回,火山性微動1回
- 18日 火山性地震 71回,火山性微動0回
- 19日 火山性地震448回,火山性微動1回
- 20日 火山性地震226回,火山性微動0回
- 21日 火山性地震 27回,火山性微動0回
- 22日 火山性地震 14回,火山性微動0回
- 23日 火山性地震 18回,火山性微動0回
- 24日 火山性地震 14回,火山性微動0回
- 25日 火山性地震 17回,火山性微動0回
- 26日 火山性地震 13回,火山性微動0回
16日の噴火以降,19日を最高に地震の回数は次第に減少し,ほぼ噴火前の状況となっています。また,微動は19日以降発生していません。噴火後火口及びその周辺では火山活動に特に変化が認められていません。これまで毎日発表していた火山観測情報を本日から毎週火曜日16時頃に発表します。今後火山活動に変化があれば,随時,火山情報でお知らせします。火口周辺は立入り禁止となっています。引き続き今後の火山活動に注意して下さい。
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ニュースクリップ
秋田地方気象台は16日、秋田県鹿角市と田沢湖町の境界にある八幡平の焼山(やけやま、1366メートル)一帯に設置された4つの地震計が同日午前11時過ぎから約1時間にわたって、火山性の微動を観測した、と発表した。また、この日、焼山の登山客から仙台管区気象台に、この付近で小規模な水蒸気爆発のようなものを目撃したとの情報も寄せられた。両気象台では、揺れがしばらく続くようなら、火山活動による災害の発生の危険もある、と警戒を呼びかけている。
登山客が水蒸気爆発を見たと話しているのは、山頂から北東数100メートルの空沼(からぬま)と呼ばれる場所。5月11日に大規模な土石流が発生した澄川温泉からは南西に約3キロ離れている。
地震計は仙台管区気象台が7月末に東北各地の地震状況を調査する目的で設置した。この付近では過去2回、地震計が設置されたことがある。同気象台は今回の微動を震度1以下の揺れとしている。ただ、1時間にわたる微動は平常時の火山の揺れに比べると、「長い」としており、火山活動が活発化している可能性を指摘している。
焼山は最近では1949年8月30日から9月1日まで3日間にわたって、噴火した。この時は長さ200メートルほどの泥流が発生した。空沼は当時の噴火口に当たる場所だという。
(asahi.com Last updated, Aug. 16 at 23:07 JST.)
火口Aおよび火口Bの位置および,火口Bから流出した「泥流」の位置を示す。 | |
火口Aは,長径(NS)15m,短径(EW)8mの火口で,30mほどの深さがある。鬼ヶ城火口の壁の一部に形成され,割れ目状の形態を示す。火口直上の尾根に立っているのは、一般の登山客。 | |
乾燥した「泥流」の表面部分の割れ目パターンからドレーンバックに伴う陥没があった事が示唆される。表面の陥没量は1-2m。 | |
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「泥流」は,火口B(写真下方)から扇形のパンケーキ状に鬼ヶ城火口湖内に流入している。 | |
末端の形状から「泥流」は複数回流出したと考えられる。 奥に見える水色のものは、以前からある湖水の一部。 | |
「泥流」は、軟弱で立ち入ることができないので、スヶールを鬼ヶ城ドーム上から林が投げやり投擲した。一目盛り20cm。2mの標尺の下部およそ80cmが泥に刺さった(ただし斜めに)。 | |
泥状の火山灰の上に着地したために周囲にリング状の泥の盛り上がりが形成されている。 そばに落ちているスヶールの一目盛りは1cm。 | |
降下火山灰の色は、濃い灰色で、火口から離れると急速に薄化する。 | |
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写真9 噴火1年前の鬼ヶ城火口 |
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撮影 林信太郎 |
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写真10 鬼ヶ城ドーム周辺の降灰状況 |
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8/17撮影(秋田県土木部砂防課提供) |
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写真11 北北西から見た噴火地点の空撮写真 |
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8/18撮影(秋田県土木部砂防課提供) |
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※「泥流」について(8月20日15時/林信太郎)
泥流ではなく、「泥流」としたい。たしかに泥が流れた証拠はあるが,泥/水の比がおそらく高く,少なくとも典型的な泥流ではない。末端部が流動している事と,泥が火口Bから吹き出して来た(流出して来た?)ということは確実。
「泥流」による扇形のパンケーキ状の泥のマウンドが火口湖内に見られる。また。ドレーンバックによる陥没の跡が見られることから少なくとも泥の一部は火口Bから吹出したと考えられる。体積は20,000m^3(暫定値)。また,泥流の色調(灰黒色)は火山灰と類似し,火口底内の既存の泥(淡褐色)とはちがう。パンケーキ状の泥のマウンドの表面は火山灰に覆われているので,今後トレンチを掘るなどしてその形成メカニズムを調べる必要が有る。
旧火口および新火口の位置関係
鬼ヶ城火口 |
まず,諸現象の起った場所の位置関係から説明いたします。「空からみる日本の火山」の58ページをご覧ください。鬼ヶ城溶岩ドームとエメラルドグリーンの水をたたえた火口湖が写っています。この火口地形には大場(1991)では名前が付けられていませんが,とりあえず鬼ヶ城火口と呼ぶことにします。新聞報道で「空沼」とよばれている場所は,おそらくここに対応しています。 |
鬼ヶ城東部火口*1) |
この鬼ヶ城火口の奥にU字型の影ができていますが,ここは直径30mほどの小さな火口地形になっています。水はなく草が生えていますので,鬼ヶ城火口よりはレベルが高い事がわかります。この火口をとりあえず鬼ヶ城東部火口と呼びましょう。この火口の奥が新火口B,ほぼ中心部が新火口Cです(この新火口名は暫定的に使っています。火口と呼んでいいかどうかも検討中です)。新火口Bは陥没がによるピットクレーターで大きさは長径15mほどの楕円形,新火口Cからは後に述べるように泥が噴出した後と小規模な陥没が見られます。 |
新火口A |
さらに,鬼ヶ城西部火口の北西に隣接して直径15-20mの小火口があります。空からみる日本の火山の写真では良く見えません。この火口の火口底の高度は鬼ヶ城西部火口よりも15-20m高くなっています。この古い火口の底に出来たのが新火口A(長径(NS):15m;短径(EW):8mの火口;深さ:30m)。この新火口は割れ目状の形態をしているので測る場所によって大きさが違います。新火口A〜Cとも既存の火口を利用して出てきた事がわかります。 |
新火口B |
水蒸気爆発およびそれに先行する一連の活動により,新火口Aからは,火山灰および噴石(弾道岩塊)が噴出し,新火口BあるいはCから泥が噴出しました。 |
新火口C |
空からみる日本の火山,58ページの図と噴火後の状況を比較する事のできる写真を載せておきました。秋田県土木部砂防課のご好意により提供していただきました。この写真からは新火口BあるいはCからでてきた泥が鬼ヶ城火口内に扇状に広がっているのがわかります。 |
*1)鬼ヶ城東部火口は津屋(1954)の1949-a3火口に一致するようです。
- 新火口Bは1949-a3火口南部
- 新火口Cは1949-a3火口北部
- 新火口Aは1949-a2から1949a1のリムに向かって形成されています
噴出物 |
火山灰 |
火口Aから噴出。南西方向に傾いた低い噴煙柱をあげたらしく,アイソパックもこの方向に伸びている。55mほどの鬼ヶ城火口壁方向に噴煙柱があがっているので地形効果でアイソパックの曲線も歪んでいる。また,南西方向にあがった噴煙から,さらに風で東方向に流された火山灰の痕跡をヘリの写真で観察出来る。この部分は非常に薄いので昨日の雨で流されてしまった可能性が高い。火山灰は新火口BあるいはCから出た泥の表面をおおっている。アイソパックマップから暫定的な体積を計算したところ,総噴出量はおよそ1000m3と見積もられる。火口近くではプラスチックに変形可能な泥状で堆積し,初日の観察者の足跡が残っていた。 |
噴石 |
噴石についてはあまり計測をおこなっていない。火口から10m地点で35cmの噴石を確認。火山灰の上には無数のbomb sagが認められた。噴石の掘削は難しく多くは調べていないがデイサイトの角れきが多かった。深い穴をつくっていることが多い。新火口BあるいはCから出た泥の内,火山灰がほとんどのっていない部分ではbomb sagが形成された後に泥が組成変形し穴の痕跡だけが残っている。 | |
泥 |
新火口BあるいはCから流出した泥が大部分と現在では考えている。ただし,水を多く含んだ火山灰がwelded spatterのように集合し,再流動した部分も含まれている可能性は否定出来ない。泥の大部分は火山灰におおわれさらにその上に無数のbomb sagが認められる。 | |
新火口BあるいはCから泥が出たとする根拠
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以上のように少なくとも最末期には泥が出てきているし,ドレインバックにともなうと考えられる陥没構造が認められる事から,新火口BあるいはCから泥が出たと考えた。新火口B,Cのいずれから泥が出てきたのかは判断が難しい(したがって,新火口と呼んでいいものかどうか迷っている)。 | |
パンケーキ状のマウンド |
新火口BあるいはCから流出した泥は鬼ヶ城西部火口を埋め,さらにそこから扇型に広がり,末端がパンケーキ状のマウンドを作っている。大きな岩塊の背後には末端に向かって延びる10数mの淡褐色の筋がついている。いくつかのローブに別れているようにもみえるがはっきりしない。末端部分周辺の火山灰は12mm以下である。火山灰に覆われていない部分の色調は黒灰色で火山灰を作る泥よりも黒味がかっている。体積は20000m^3(暫定値,まだ再計算していない)。 | |
bomb sag |
末端部のbomb sagの内大きなものからは鬼ヶ城火口湖にもとからあった泥がしみ出してきているので,泥の厚さは数10cm程度と考えられる。なお,泥の流れ込んだ鬼ヶ城火口湖の温度は噴火の翌日にすでに低かった(気象庁の計測) |
噴火の経過
以上のような観察から,次のようなシナリオを考えました。
(千葉のコメント)
まず泥が絞り出されたとしているが、これは、パンケーキ状の泥のマウンド表面に多数のbomb sagが見られることから判断したと思われる。しかし、泥に覆われたbomb sagがあって、確認ができないだけという可能性はないのか。最初にカタストロフィックなイベントがあって、事が始まるのが普通であるような気がする。それを考慮して、想像をたくましくすると・・(1986伊豆大島C火口列の噴火目撃記憶を参考にして・・)
はじめに、爆発でA割れ目火口が開いて、噴石を飛ばすが、大きな岩の大半は割れ目の中に落ち込んだかもしれない。直ぐに、お湯と泥の混じったもの(泥漿)が、地下から上昇してくる。しかし、鬼ヶ城火口のヘリで横方向にあった割れ目(あるいは古い火口)に入り込みB火口から泥漿状のものが地表に出る。その時、A火口も活動をしており、小さめの岩を核にしたり、泥団子のようになったものを噴出している。細かなものは、高くまで上がり、風に流されて火山灰となる。しかし、湿っているので、それほど広い分布域ではない。その後吹き出すものがなくなるにつれ、泥漿のヘッドが下降し、水蒸気がのみがジェット状に吹きだし、大きめの噴石をも飛ばす。パンケーキ状の泥のマウンド上に多数のインパクトクレーターが形成される。さらにヘッドが下がると自らのフォールバックでAからもBからもでにくくなる。しかし、最後に、新たに生じたC火口(地下では割れ目状?)から少しの水蒸気や泥と一緒に元の池の堆積物を吹き飛ばし、茶色っぽい同心円状の分布域を形成する。そして再末期にB火口から、泥漿の一部がドレインバックする。
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