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(10月31日12:00更新)ver 6.51 |
新着情報
- 10月31日 この事故を伝える記事に追加
- 10月19日 この事故を伝える記事を作成
- 10月5日 垂直ステレオ写真追加
- 9月30日 英語版ページの作成
- 9月28日 泥水噴出口比較写真の追加
- 9月26日 沼ノ平現地調査写真の追加
- 9月25日 沼ノ平現地調査写真の紹介
- 9月24日 9月23日の現地調査報告掲載
- 9月19日 事故現場位置の推定写真修正
このページは、千葉達朗と鴨志田 毅によってメンテナンスされています。 |
1997年9月15日午前、安達太良山の沼ノ平火口で、火山ガスによって14名のパーティーの内4名が亡くなるという事故があった。H2S(硫化水素ガス)による火山ガス災害としては大きい。このページでは、最近の沼ノ平火口の状況を写真で紹介すると共に、関連情報を整理していく。今後の防災対策に役立てていただければ幸いである。沼ノ平火口では、1900年の噴火で硫黄鉱山の採掘所が直撃を受け、火砕流の熱風によるやけどなどで72名の死者が出ている。現在では、火口は周辺からの土砂の流入で完全に埋め立てられ、平坦地となっている。昭和40年頃まで稼働していた硫黄鉱山も跡形もない。しかし、活火山の火口であるという事実までが埋め立てられたわけではないので、いつまた活動を再開してもおかしくはないのである。昨年9月1日に発生した噴泥や、地熱地域の拡大など、活発化の兆候がでてきており、注意が必要であろう。
今回の災害を引き起こしたH2S(硫化水素ガス)は、目に見えない。また、空気より比重が大きいために、窪地などに貯まって、極めて高い濃度になることがある。数百ppm程度になると、短時間で意識がなくなるという。
もし、登山中に気分が悪くなったり、H2Sの臭い(いわゆる「卵の腐った臭い」)を強く感じたときは、ただちに高い場所に移動すること。また、H2Sの場合は、ガスマスクがないときには水で湿したタオルを口に当てるとガスマスク代わりになるが、過信は禁物。尚、H2Sは高濃度になると、いわゆる「卵の腐った臭い」を感じなくなるという。
垂直空中写真では、沼ノ平火口の微地形の特徴が良く捉えられる。なお、泥水噴出口は写っていないが、これは1996年に生じたためである。
国土地理院の空中写真(C TO-76-23 C20-24,C20-25)を使用しました。
この写真の掲載にあたっては、国土地理院の承諾を得ています。
番号
サムネイル
解説
写真-24
沼ノ平火口ステレオ写真
沼ノ平火口は、周囲から流れ込んだ堆積物で完全に埋め立てられている。周囲には、灰色の角レキなどからなる段丘が断片的に分布する。3D赤矢印が指している地点が事故現場。
写真-25
沼ノ平火口南西部拡大
黄色のスポットは、H2Sガス噴出が特に多いと思われる地点。赤のスポットが、事故現場。
9月23日に、千葉・鴨志田・藤縄で現地調査を実施。当日はあいにくの悪天候だったが、事故現場までたどりつき、調査をすることができた。現在、沼ノ平ルートは、入山規制がしかれているため、所管の役場に届け出ると共に、硫化水素用のガスマスクやセンサーを携帯・持参して、慎重に調査を行った。以下にその概要を報告する。サポートをいただいたNHK福島局にお礼申し上げる。なお、この調査の様子は、9月25日の「クロースアップ現代」で紹介された。撮影・作成 (T.C.):千葉 (T.K.):鴨志田 提供(SUZUKI):鈴木
番号
サムネイル
解説
写真-1
ガス災害後に立てられた、登山者に沼ノ平の立ち入り規制を伝える看板。(T.C.)
写真-2
1997年の春に確認された新しい泥水噴出口の活動は活発。青灰色のすそ野が、立入禁止の柵をこえて拡大中。(T.C.)
写真-3
もう一つの新しい泥水噴出口。(T.C.)
写真-4
沼ノ平の西側の各所からは、100度近い透明な温泉が沸々と涌きだしている。そこから流れ出る流路の底には淡黄色の湯ノ花が沈殿している。(T.C.)
写真-5
南側の地熱地域はかなり広く、新しい堆積物レキの隙間のそこここから硫化水素ガスが吹きだし、その割れ目に昇華した硫黄が付着している。(T.K.)
写真-6
表面は普通に見える部分でも、裏返すと背面には、びっしり硫黄が付着し黄色に変色している。くっついているので、手では簡単に裏返せない。
レキ自体が割れ、そこからガスが出ている場合もある。(T.C.)
写真-7
事故現場は、地熱地帯のところに出口をもつ沢をやや登ったところの、傾斜変換点付近。(T.C.)
写真-8
事故現場は、斜面を刻むV字型の谷。ステレオ写真。(T.C.)
写真-9
そこはいくつかの沢が集まっている上に、ちょうど湖岸段丘の付け根の脇で、沢筋がほぼ直角に曲がっている。つまり、火山ガスが集まりやすく拡散しにくい特異な地形。(T.C.)
写真-10
亡くなった方にたむけられた赤い花が、ガスのため(?)脱色し、岩がピンク色に染まっていた。(T.C.)
写真-11
ガスセンサーが100ppm以上の値を示した。硫化水素用のガスマスクをしっかりしていたが、それでもすこし悪臭(プロパンガスのような)を感じたほど。ガスマスクなしでの調査は極めて危険と思われる。(T.C.)
写真-12
写真-11の撮影状況。事故現場にたどり着く15m程手前である。高度は5mほど高い。(T.K.)
写真-13
事故現場付近の岩の表面は黒色に変色、高濃度の硫化水素ガスの滞留は定常的である可能性がある。(T.C.)
写真-14
事故現場付近で、硫化水素ガスが出ている様子はない。脇の崖を削った状態を見ても、硫黄の1cm位の角レキを含むが、古いもののようである。地面は冷え切っている。(T.C.)
写真-15
沼ノ平は、最近の泥水や温泉の活発な活動によって流水が絶えず流れるような状態に変化している。数年前まで中央部を横断するようにしっかりついていた踏み跡は、よくわからない。ちょうど「雨上がりの校庭」のよう。濃い霧がたちこめているときに、まっすぐ踏み込んで行くのがためらわれたのは、心情的には理解できると思った。(T.C.)
写真-16
現地調査後に推定した、パーティのルート(1)
使用した垂直空中写真は、国土地理院撮影。(T.K.)
写真-17
現地調査後に推定した、パーティのルート(2)
使用した写真は、9月12日撮影。(T.K.)
写真-18
沼ノ平全景写真
1997年5月撮影。(SUZUKI)
撮影 (k):鴨志田
写真-19
活動活発化後、事故発生前に設置された看板
1997年5月に設置された看板。火山ガスの危険性を伝えている。(k)
写真-20
泥水噴出口周囲のロープ
泥水噴出口のまわりには、1997年5月にトラロープで柵が作られていた。(k)
写真-21
銚子口に古くからある看板
沼ノ平出口(火口瀬)硫黄鉱山跡地付近に、古くから設置されていた看板。(k)
写真-22
沼ノ平、E泥水噴出口の推移
- 上は、1997年5月2日、鴨志田撮影
- 中は、1997年5月26日、山元撮影
- 下は、1997年9月23日、千葉撮影
E泥水噴出口周囲の泥の分布域が拡大したのは、活動が活発化したというよりも、単に雨上がりで地下水位が高いためなのかもしれない。
写真-23
沼ノ平、D泥水噴出口の推移
- 上は、1997年5月2日、鴨志田撮影
- 中は、1997年5月26日、山元撮影
- 下は、1997年9月23日、千葉撮影
D泥水噴出口は、5月2日には活動を停止していた。しかし、5月26日までには、すぐ近くに新たに別の噴出口(陥没状)が形成された。9月23日の段階では、その新しい噴出口から泥水が噴出し、オーバーフローしているのが確認された。
山元さん撮影の写真は、地質調査所の火山地質のホームページからの転載です。
●沼ノ平火口で火山ガス?登山客4名死亡 9月15日午前、安達太良山の沼ノ平火口付近で、登山客4人が倒れているとの連絡がアマチュア無線を通じてあった。かけつけた地元の救助隊によって、午後2時前4名とも死亡が確認された。 |
新聞記事やテレビニュース映像をもとに整理 |
●安達太良山事故、濃霧で救出大幅に遅れる 15日、福島県・安達太良山火口付近で起きた登山者の死亡事故。多数の黄色い噴出口があり、ガスのにおいが立ち込める危険な区域に入り込んだ理容師のグループは次々にバタバタと倒れた。しかし、助けを求める無線は通じにくく、霧にも阻まれ、救助隊の現場到着は大幅に遅れた。
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死因は 火山性の硫化水素ガスを吸ったことによる中毒死と断定 9月17日、福島県警察本部は、亡くなった4人の遺体から血液や尿など 採取し、福島県立医科大学に依頼して調べた結果、血液から硫化水素の成分が検出されたほか、4人が直径5mほどの狭い範囲内に倒れていたことなどから、警察では4人の死因 は硫化水素ガスを吸ったための中毒死と断定した。 |
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●最近の安達太良火山の活動についてのページ
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気象庁発表の火山観測情報の転載 |
千葉達朗のページ