ある火山学者のひとりごと


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<最新10発言>
20024. 2025年08月27日 07時42分49秒  投稿:Kibarin 
千葉さん、大変詳細な観測、研究史のご説明有難うございました。不勉強なため内容を十分理解できたわけではありませんが、研究者、研究機関の方々がDLFE等を利用して全力でマグマ分布の解明に取り組んできた熱意が伝わりました。

富士山内部のマグマ、熱水、ガス分布が3次元的に見えてくるというのが究極の目標と理解しましたが、私見ではやはり直接データが得られないため逆問題を解ききれないというのが大きなハードルになっているということなのかなと感じました。サンプルも取れて構造も比較的に単純で捉えやすい地震予知【もちろん難題ですが】とは違う難しさがあるのかと。

これからもここで学ばせて頂きたく、またいろいろ質問させてください。火山学は面白いうえに社会的要請も大きく重要な学問だと思いました。

20023. 2025年08月26日 21時28分31秒  投稿:千葉 
階段図を用いた富士山の噴火予知の可能性

過去に、階段図を用いて火山の噴火予知が可能であると考えられた時期がありました。

階段図とは
階段図とは、時間経過に伴う噴火イベントを累積的にプロットし、ステップ状に上昇するグラフを指します。火山学において、過去の噴火記録を時間軸上に整理し、噴火の頻度や間隔を分析する手法です。

富士山の噴火史と階段図
富士山は過去約5600年間で180回以上の噴火が記録されており、平均約30年に1回の頻度で噴火が発生しています。VEI4以上の大規模噴火は数百年に1度(例: 864-866年貞観噴火、1707年宝永噴火)。
宝永噴火(1707年)以降、2025年現在で約318年間噴火がなく、階段図上では長期間の「平坦期」が続いています。この休止期間は、過去の長期休止(例: 1083-1511年の約428年間)に類似し、次回噴火が宝永級(VEI5以上)の大規模なものとなる可能性が指摘されています。

予測の課題
噴火の規模はGutenberg-Richter則に従い、規模が大きいほど発生頻度が低い傾向にあります。また、噴火現象や発生地点が多様であるため、規模やタイミングの正確な予測は困難です。関連するデータや見解があれば、ぜひご共有ください。


20022. 2025年08月26日 21時24分55秒  投稿:千葉 
火山の地下で 深部低周波地震は 以外に 普遍的にあることがわかってきた 
そこが 必ずも 火口の真下に限らないし 
おおきさも ばらばら
噴火予知で探しているような マグマだまりではなさそう
液体がタップンタップンしていたらわかるはず

20021. 2025年08月26日 18時48分12秒  投稿:千葉 
Kibarinさん>
 今日は火山防災の日ですね

 富士山は、宝永噴火以降300年以上噴火をしていないので、近代的な噴火観測の経験がない火山です
火山噴火の直前にどのような経緯をたどるのかがわかりません。
しかしながら、日本一の高さの活火山でもあり、影響範囲も広いので
将来の噴火に備えていろいろ思考実験をすることが大切とおもいます。
内閣府のyoutube動画も、リアリティを持ってもらうためのものでしょう。

 さて、お尋ねの富士山のマグマだまりがどの辺にあるのかですが、
深部低周波地震が集中する、山頂の北東側の地下10-20km付近の範囲がそうかもしれない
と考えられた時期もありましたが、最近はもっと深い位置にあると考えている人が多いようです。

富士山の地下約10-20km(主に15km前後)で発生する低周波地震(Deep Low-Frequency Earthquakes: DLFE)は、通常の地震より周期が長く、地下の流体運動や圧力変化に関連すると考えられています。これらの地震の源が純粋なマグマ(液体マグマの移動や発泡)なのか、それともマグマ由来の熱水・ガスなどの流体(hydrothermal fluid)なのかについては、既存の研究で議論されており、完全なコンセンサスは得られていません。主な理由は、直接観測が難しく、地震波解析、電磁気探査、抵抗率構造などの間接データに基づくためです。
研究の多くは、DLFEをマグマシステムの活性化の指標として扱っていますが、源の解釈は以下の3つの立場に分けられます:

(1)マグマ直接起源説: DLFEはマグマだまりの圧力変化やマグマの移動・発泡によるもの。
(2)熱水/流体起源説: マグマから派生した熱水やガスの移動・振動が原因で、マグマそのものではない。
(3)統合/マグマ-熱水システム説: マグマ由来の流体が主で、両方が連動(マグマ供給が熱水を活性化)。

以下に、時系列や主要機関・研究者ごとに既往の研究をまとめます。情報は地震波速度解析、抵抗率構造、電磁波観測、地殻変動データに基づくものが中心です。議論の不確実性は、DLFEの微弱さ(M<2が多く、ノイズに埋もれやすい)と、火山の複雑な地下構造に起因します。

1. 初期の観測とマグマ起源の指摘(1990s-2000s)

■1990年代後半-2000年頃の気象庁・防災科学技術研究所(NIED)の観測: 富士山のDLFEは地下15km付近で多発し、マグマの活動を示唆。2000年秋の急増(月数百回)はマグマの動きの活発化と解釈されたが、噴火に至らず。源はマグマや熱水の可能性を指摘し、直接マグマではなく流体の振動とする声も。例: 低周波地震はマグマの初期活動を示すが、熱水の関与を否定せず。
■東京大学地震研究所(ERI)の研究(2001-2005): 立体アレイ観測でDLFEの震源を精密決定。源は低速度域(S波速度低下)と一致し、マグマだまりの下部供給を示唆。ただし、熱水の影響も考慮され、「マグマ活動と深い関係があるが、メカニズムは不明」と結論。ボーリング観測で岩石試料解析を組み合わせ、噴火様式の変遷を議論。
■山梨県富士山科学研究所(MFRI)の報告(2000s): DLFE発生領域は低比抵抗域の上端で、マグマだまりの存在を示す。熱水の拡散放出も指摘され、マグマ起源のCO2が熱異常なく放出されるケースを例に、源が純粋マグマか熱水かを区別しにくいと指摘。

2. 2011年東日本大震災後の議論活発化(2010s)

■NIED・神奈川県温泉地学研究所(HSRI)の研究(2010-2011): 2011年の静岡東部地震(M6.4)後、DLFEが増加。源はマグマ溜まりの圧力上昇(1-2MPa)によるが、熱水・ガスの流体変化も伴う。富士山と箱根火山の比較で、富士山のDLFEは10-20km深くマグマ関連、箱根は20-25kmで熱水寄りと差異を指摘。b値変化から活動活発化を示すが、源は流体全般。
■静岡大学・南條和明教授らの研究(2019-2023): マッチドフィルタ法でDLFEを約6000回検知(気象庁の3倍)。2011年地震後、ETASモデルで活動活発化を確認。源はマグマシステムの変化を示すが、熱水のサージ(流動)も関連。従来の「静穏」評価を覆し、流体の不安定流動を強調。
■ERI・Aizawaらの研究(2005-2021): 磁気抵抗率構造から、地下7-17kmに柔らかい構造体(マグマや熱水)。DLFEは低抵抗域で発生し、マグマの上昇に先行する低温熱水系を示唆。源はマグマ由来流体(熱水・ガス)の移動で、純粋マグマではない可能性が高い。

3. 最近の統合的解釈(2020s-現在)

■文部科学省・地震火山観測研究計画(2020-2024): DLFEの活発化はマグマ供給増加を反映し、浅部群発地震や噴火に先行。源は「(火山性)流体」(マグマ起源の熱水・ガス)と定義し、マグマそのものか流体かを区別せず統合。富士山のDLFEはマグマチャンバーにつながる高減衰ゾーンで発生、流体の移動で励起。
国際研究(Nature, AGUなど, 2019-2024): DLFEはマグマ-熱水システムの不安定流動を示す。例: 抵抗異常の側壁近くで発生し、流体はマグマとして支持されるが、熱水サージの証拠も(Hakone例)。源はマグマ由来だが、直接マグマではなく熱水の振動が主流。

まとめ

DLFEの源はマグマ由来の熱水・ガスなどの流体が優勢で、直接マグマの移動より流体の振動・サージを強調。マグマ供給がこれをトリガーする統合モデルが近年増えている。
はっきりしない点: メカニズムの詳細(発泡 vs 流体移動)は未解明で、観測限界(微弱信号、深部アクセス難)から。将来の研究で電磁波やAI解析が進む可能性。
防災的含意: DLFE増加はマグマシステムの活性化を示すため、監視強化(気象庁のリアルタイムデータなど)が推奨。






20020. 2025年08月26日 14時15分43秒  投稿:Kibarin 
今日は火山防災の日ですね。この日に合わせて内閣府が富士山噴火シミュレーションをYoutubeで公開していますが、宝永噴火級のイベントによる災害の想定と理解しました。

そこで質問ですが、最近は山体の周りで内部構造についての色んな探査が行われているようですが、それらの解析結果からマグマだまりはどのくらいの規模だから次の噴火のスケールは云々という予測を立てられるようになっているのでしょうか?

それに加えて、富士山は過去色んなスケールとインターバルで噴火を繰り返してきたとは思いますが、噴火史と上記の探査結果等を踏まえて、次に宝永級或いはそれ以上の噴火が起こる確率は何パーセント程度ということは評価されているのでしょうか。勉強不足の素人質問で失礼します。

20018. 2025年08月24日 12時18分47秒  投稿:おやまだ 
 [https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20250823/5030025095.html]
雲仙・普賢岳噴火災害に対応された元島原市長の鐘ヶ江管一さんが千の風になったしまったとのことです。

20013. 2025年02月20日 22時10分45秒  投稿:ちば 
 [https://paspro.com/bousai/kazan/_/bbs/?file_id=MV8wMDExMzY%3D&name=%82%A6%82%F1%82%C6%82%C2%82%A4%82%A4.png]
カッパドキアの妖精

20012. 2025年02月20日 19時42分35秒  投稿:Mr.T 
お騒がせいたします.
次の文章は,Mr.Tがちばさんに20008の前にメールでお送りしたものです.一部修正しました.
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サイト「ある・・学者のひとりごと」の掲示板には画像の添付ができませんので,メールとさせて頂きましたお許しください.

2月15日にNHK BSで放送された「体感!グレートネイチャー 誕生!文明の十字路〜トルコ・知られざるしゃく熱大地」を見ました.番組の最初にカッパドキアの「妖精の煙突」という地点の紹介があり,興味深い画像などを見ることができました.なお,気になった画像を添付いたしました.

ギョクハンアトゥジュ博士(トルコ鉱物資源調査開発総局)は,「妖精の煙突」のキノコ岩(煙突でなくキノコ岩と呼ぶことにします)の柄の部分は,940万年前の火砕流の凝灰岩,傘の部分は910万年前の火砕流の凝灰岩とされています.

柄の部分は概ね灰白色を呈し,珪長質な火砕流堆積物と考えられます.一方,傘の部分は暗色・暗褐色・褐灰色だけでなく灰白色の部分もあります.特に暗色・暗褐色は表層部だけです.これは藻類の影響であり,火砕流堆積物が苦鉄質のためではないようことを示唆していると考えます.

柄の部分は珪長質な火砕流堆積物と考えられますが,層理が良く発達しています.層理が良く発達する陸上堆積の火砕流堆積物は,寡聞にして知りません.ご教示よろしくお願いいたします.
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ちばさんにお願いがあります.メールに添付した画像を,この掲示板に張り付けて貰えないでしょうか.
なお,ちばさんの20008への返信?を後刻改めて投稿いたします.数回投稿する予定ですので五月蠅いでしょうが,よろしくお願いいたします.


20010. 2025年02月20日 13時43分17秒  投稿:ちば 
画像認証OFFにしました

20008. 2025年02月19日 14時26分14秒  投稿:ちば 
Mr.Tさん>

 ありがとうございます

 あの番組は面白かったですね 着目点が地質屋さんでした
 帽子岩の直下の
 成層構造の成因には3つの可能性があるかと思います
 (1)火砕流が流れた後の二次堆積 雨が降ると低い土地に移動を繰り返して成層構造ができた
 (2)火砕流のあとで 火砕サージなどのより高速な希薄な流れからの堆積
 (3)火砕流の後で降下軽石が堆積したので成層構造が見える
 どれなのかは 分布範囲を広く調べてみないとわからないでしょう
 なんとなく(1)のように見えます

 上の帽子も下の柱も火砕流だとすると
 火砕流の最下部には相対的に密度の高い粒子が集まりやすく
 時に角礫層みたいになることもあります
 そういう部分は上部の軽石の多い部分よりも浸食抵抗性が高い
 2時期の火砕流が重なっている境界部分では
 上部が新しい火砕流の最下部 下部が古い火砕流の最上部となるので
 下部よりも上部の浸食抵抗性が高いことになる
 
そういうことかなとおもっています

P541 図31.6の部分


注 上部と下部の境界に ここでは 降下軽石があるように見える
  上部の暗色の円錐形状の形成はこの地域の特徴で NHKの番組中では”藻類の影響”と解説



文献:
A Fascinating Gift from Volcanoes: The Fairy Chimneys and Underground Cities of Cappadocia
January 2019
DOI:10.1007/978-3-030-03515-0_31
In book: Landscapes and Landforms of Turkey (pp.535-549)