台風1326号と沿岸前線に伴う豪雨の構造山川修治 台風26の通過に伴い伊豆大島では激甚な土砂災害に見舞われた。今回の豪雨には台風のほか,その中心の北東側に出現した沿岸前線(図1)も関係していた。 水戸と勝浦のウインドプロファイラ(図2)で明らかなように,台風が伊豆諸島南部に接近中であった15日,両地点の下層風系は大きく異なることがわかる。その前線面の南東側より流入した暖湿流は,台風のインナーバンドの積乱雲(Cb)を伴っており,前線北側から入った北東風の上面,つまり前線面上における上昇気流によって積乱雲は一段と発達し,沿岸前線に沿ってSW-NE走向で線状に並ぶという構造が明瞭となった(図3)。 館野の15日の気温のエマグラム(状態曲線;図4)を見ると,圏界面がおよそ15kmと高く,その気温は約−72℃まで低下していたことがわかる。そのことは対流圏全体の大気上安程度が強まっていたことを示す。 沿岸前線をはさみ,台風の東側の南東風(暖湿流;26~28℃)と関東東岸沖から入る北東風(冷湿流;18~20℃)との間で気温差は8℃に及んだ(図5)。ちょうど大島付近から北東方の房総半島方面へ向けて沿岸前線が出現した。積乱雲は南東から流入し,前線面上での滑上も重なり,北西側で一段と雲頂を増し,凄まじい豪雨になったと考えられる。 この停滞前線活動は15日から16日に日が改まった頃から数時間急発達し,2時間で200mm以上,5時間で約500mm,1日で800mm以上という壮絶な豪雨を記録し,大規模な土石流の発生につながったと考えられる。 更新日:131023 ↑このページの最初へ
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