第四紀火山カタログ解説

1.新しいカタログの必要性
    日本列島における第四紀火山の情報を集録したデータベースとしては、1962年にIAVCEIの前身が刊行した活火山カタログや、気象庁が刊行した日本活火山総覧がある。しかしこれらは情報が活火山に限られている。第四紀火山全体を収録したものとしては、地質調査所が刊行した1:200万地質図「日本の火山(第2版)」があるが、収録項目は限られている。この他にもデータベース作成の試みはこれまでにいくつかあったものの、完成をみていない。
    現状では、日本の火山の全体像を把握するためには、個々の火山の論文や研究報告書等を検索する必要性を生じている。一方では若い火山岩の年代測定が精力的に進められた結果、第四紀火山としての認定そのものに修正が求められるケースが出ており、データベースの新たな構築が急務と考えられている。
     本カタログは,日本列島の第四紀における火山活動を総括し,特にマグマが地表へ噴出する様子を時間的空間的に,なるべく定量的に記述することを目標として作成された.ここでは,第四紀の範囲として,ほぼ2Maまでをとることにした.
2.火山カタログ作成の経緯
     本カタログと似たような内容を持つデ−タベ−スで,最近発表されたものとしては,地質調査所1981年発行の200万分の1地質図「日本の火山第2版」があり,約250個の第四紀火山が記載されている.
     また,より詳細なものとしては,国際火山学会(IAV)発行の"Catalogue of active volcanoes of the world including solfatara fields; Japan,Mariana, Kurile Islands, Hisashi KUNO, editor" (1962)があるが,これには活火山(当時の IAVの定義による)しか掲載されていない.
     Smithonian Institution の Volcanoesof the World は Catalogueの一部を基本にしているため,内容がより狭く,また,最近(1万年)の噴火の記述に限られている.
     また,気象庁編「日本活火山総覧第2版」(1991)も約83の活火山をまとめて記述している.しかしながら、これらは情報が活火山に限られているあるいは収録項目が限られているため、日本の火山の全体像を把握するためには、個々の火山についての論文や研究報告書を検索する必要がある。
     一方、近年になって若い火山岩の年代測定が精力的に進められた結果、第四紀火山としての認定そのものに修正が求められるケースが出ており、データベースの新たな構築が求められている。
     こうした現状を背景として、第四紀火山カタログ委員会では、日本における第四紀火山についての基礎データのとりまとめを行ってきた。今回、「日本の第四紀火山カタログ」としてこれまでの成果をとりまとめることができたので,CD-ROMとして公開する運びとなった.
     本カタログの作成に際しては,「日本の第四紀火山体デ−タベ−ス」(荒牧・山崎編,1984)を参考にした.
3.火山カタログの内容
     本カタログは、「火山カタログ」「個別火山体カタログ」の2種類で構成されている。それぞれのカタログの内容は、以下の通りである。
    ○火山カタログ
    個別の火山体がいくつか集まって1つのグループを形成している場合、そのグループ火山全体のカタログ。例えば「支笏」という火山カタログには、支笏カルデラ・恵庭・風不死・樽前が含まれている。
    収録したデータ項目は、火山名、緯度・経度、グループの体積及び年代範囲、そのグループに含まれる個別の火山名である。
    ○個別火山体カタログ
    個々の火山体のカタログ。上記の例で言えば、恵庭・樽前などのそれぞれの火山体を指す。
    収録したデータ項目は、火山体の構造分類、緯度・経度、山頂の高度、火山体の面積と体積、噴出物の種類、活動年代、産出する岩石とその量比、SiO2組成レンジ、文献リスト等である。

謝 辞
     本報告は,核燃料サイクル開発機構「地質環境の長期安定性に関する研究」の成果の一部である.
     カタログの作成にあたっては,赤石和幸,麻原慶憲,阿部泰久,荒井健一,伊倉清隆,石崎康男,石塚吉浩,糸井理樹,氏家治,宇都浩三,及川輝樹,大島治,大塚匡,大場司,大場与志男,鎌田浩毅,木村純一,草薙恵,久保誠二,児玉浩,後藤芳彦,小林武彦,斎藤聡,齋藤武士,酒寄淳史,佐々木実,沢田順弘,肉倉真,霜鳥洋,隅田まり,曽我智彦,土谷信高,角縁進,溜池俊彦,永尾隆志,中川光弘,中野俊,中村洋一,名越幸生,早川智也,早津賢二,原山智,伴雅雄,東麻里子,東野外志男,広瀬亘,福島大輔,藤沢康弘,藤縄明彦,藤巻宏和,船山淳,古川竜太,古山勝彦,星住英夫,堀江太一郎,三宅康幸,森泉美穂子,守屋以智雄,矢野徹,山縣耕太郎,山崎正男,山本正継,吉田武義,吉本充宏,李仁雨,脇山勘治,和田恵治,渡辺一徳の諸氏に多大なるご協力を頂いた.以上の方々に深く感謝致します.
引用文献
    荒牧重雄・山崎正男(編集)(1984)日本の第四紀火山体カタログ. Nos.1−194
    地質調査所(1981)200万分の1地質図「日本の火山第2版」
    地質調査所(1995)100万分の1日本地質図第3版CD-ROM版
    Kuno, H., editor" (1962) Catalogue of active volcanoes of the world including solfatara fields; Japan, Mariana, Kurile Islands, International Association of Volcanology
    Smithonian Institution (1994) Volcanoes of the World 2nd ed
    気象庁編(1991)「日本活火山総覧第2版」

メニューに戻る