財団法人日本測量技術協会 第18回技術発表会 プレプリント原稿

平成8年6月12日開催
    

DEMによる微地形分類に関する研究

千葉達朗(アジア航測株式会社)
村上広史・星野 実(建設省国土地理院)


1.目的  当初,1時期のDEMデータから地すべり地形を自動抽出することを目標としたが,パターン認識が困難をきわめた.そこで,第1段階として,地すべりの発生前後の2時期のDEMデータを使用した地形分類を試みた.頻繁・迅速にDEMが作成できれば,早い時期に地すべりなどを捉えることができるかもしれない.
2.方法  長野県長野市の地附山地滑りを対象として,5mメッシュのDEMを2つの方法で作成した.(1)空中写真よりAuto-3Dにより自動作成したもの(これは樹木の頂点の高度を出力する),(2)発生前後の1:1,000地形図にメッシュをかぶせ,人間が直接読みとったもの,である.  これらのDEMに,各種フィルター処理を加え,同一フォーマットの数値ファイルを作成した.平均傾斜角度,発生前後の地形変化量などである.Auto-3D高度と地形図高度の差分値は,樹木高ファイルとして利用できる.これらのデータは,Spyglass Transform を用いて可視化した(図1,2,3).


図1.地形変化量           図2.北西光陰影図          図3.樹木高さ分布

3.総合化  Adobe Photoshopを使用し,CYMKの各色にそれぞれの値から作成したグレースケールの画像を割り付け,疑似カラー画像を作成した.平均傾斜角度をシアン(急傾斜ほど濃い),地形変化量をピンク(減少側ほど濃い),樹木の高さをイエロー(高いほど濃い),北西光による陰影をブラックに割り当てた(図4).
 その結果,地滑りによる窪地が赤色,移動土塊の盛り上がり部分が淡い黄白 色,滑落崖が青色,末端崖が灰緑色に,周辺の樹林域がオレンジ色として表現された.  今後,さらに,他のフィルター(2次微分値など)の計算結果も用い,現状の写真判読の補助レベルから,自動分類,自動抽出をめざしていきたい.


図4.試作された地形分類図(原図はカラー)